岡﨑晴輝先生より、次のご論文2つをご恵贈頂きました。誠にありがとうございます。
- 岡﨑晴輝 [2019] 「政権選択論の勝利――「政治改革」の再解釈」『政治研究』66: 33-54
- Okazaki, Seiki [2019] 「In Defense of Proportional Representation with a Limited Majority Bonus」『法政研究』85(3/4): 740-722.
「政権選択論の勝利」では、選挙制度改革に先立つ1993年11月の第一次細川・河野会談の歴史的重要性を改めて提起し、当時における細川護熙氏の発言を中心に思想史的解釈を施すことで、自民党によって唱えられた政権選択論(有権者による政権選択可能性を理由として小選挙区制を比例代表制に優越させる議論)が「思想的勝利」をおさめた過程を描き出しています。
2つ目の英語論文では、上記の政権選択論に見られるような、(議院内閣制における)比例代表制では有権者が政権を直接選ぶことができない(政権形成が選挙後の政党間交渉に委ねられてしまう)といった批判を念頭に置きつつ、この問題を乗り越える制度案として多数派優遇の比例代表制が検討されています。この案は最も多くの票を獲得した政党または政党連合に一定割合以上の議席を配分する仕組みで、岡﨑先生が以前から提唱されているものです(選挙市民審議会でのご報告でも概要を知ることができます)。今回の論文ではさらに進んで、多数派に55%の議席を与えるけれどもそれ以上は与えない、すなわち少数派に45%の議席を確保させる(少数派プレミアムを与える)「多数派限定優遇(limited majority bonus)」の比例代表制を提起しています。
拝読して、改めて選挙制度改革を考えるにあたっての示唆に富んだ議論として多くを学ぶと同時に、ウェストミンスター型 vs. コンセンサス型というレイプハルトの構図を乗り越える議論を模索する問題意識にもなるほどと感じるところがありました。多数派(限定)優遇制度のご提案は大変刺激的で、私自身はそれをどう評価すべきか考えがまとまっていないのですが、自分なりの立場を整理するための良いきっかけを頂けましたので、これを機会に勉強したいと思います。