御礼: 河合 [2010]; 河合 [2012]

  • 河合恭平 [2010]: 「H・アレント『人間の条件』における世界疎外に至る論理展開――公共性論における葛藤の解釈に関連させて」『現代社会学理論研究』(4): 106-118.
  • 河合恭平 [2012]: 「H・アーレントの共通世界と「活動」の暴力をめぐる関係――暴力への「境界」としての公共性論」『年報社会学論集』(25): 25-36.

著者の河合さんから頂戴しました.通俗的なアレント受容から距離を取って,「公共性の困難」に正面から向き合おうとする重要な取り組みだと思います.

政治と理論研究会 第6回例会

下記の要領で研究会を開催致します.終了しました.
参加希望の方は,kihamu[at]gmail.com まで予めご連絡下さい.

  • 要領
    • 日時:9月29日(土)17時開始
    • 会場:法政大学 大学院棟 501教室
    • 報告者:松尾隆佑 (法政大学 博士後期課程)
    • 報告題名:「ステークホルダーの政治主体性――ステークホルダー・デモクラシーの理論化へ向けて」

購入@アマゾン: 舩橋/長谷川/飯島 [2012]; Nussbaum [2006]; Dryzek [2006]; Archibugi et al (eds.) [2012]; Donahue and Zeckhauser [2011]

届く.

  • 舩橋晴俊/長谷川公一/飯島伸子 [2012]: 『核燃料サイクル施設の社会学――青森県六ケ所村』有斐閣(有斐閣選書).

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  • Nussbaum, Martha C. [2006]: Frontiers of Justice: Disability, Nationality, Species Membership, The Belknap Press.

  • Dryzek, John S. [2006]: Deliberative Global Politics: Discourse and Democracy in a Divided World, Polity Press.

  • Archibugi, Daniele, Koenig-Archibugi, Mathias, and Marchetti, Raffaele (eds.) [2012]: Global Democracy: Normatice and Empirical Perspectives, Cambridge University Press.

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  • Donahue, John D. and Zeckhauser, Richard J. [2011]: Collaborative Governance: Private Roles for Public Goals in Turbulent Times, Princeton University Press.

読書@市ヶ谷: 尾内 [2012]; 金井 [2012]; 五野井 [2012]

  • 尾内隆之 [2012. 9]: 「原発再稼働と説明責任」『生活経済政策』(604): 11-14.
    • 「ご説明」と「ご理解」の政治
  • 金井利之 [2012. 9]: 「原子力発電所と地元自治体同意制」『生活経済政策』(604): 15-19.
    • 地元同意制における周辺のより周辺(「より僻地」)への受苦配置による「多数派の専制」可能性.
    • 難航する地元同意は,迷惑施設の必要性再審と非迷惑化可能性引き上げの契機.
  • 五野井郁夫 [2012. 9]: 「直接民主主義の政治は議会政治に何をもたらすのか」『生活経済政策』(604): 20-23.

リーダーは個人的属性で選ぶべき?

河野勝先生がブログに「政治リーダーシップ論」と題する記事を書いており,あるべきリーダーシップ論について,四点に分けて論じています.興味深い内容なので,読みながら感じた疑問を幾つか書き留めておきたいと思います.

一点目(ろくなリーダーシップ論がない)はスキップしてまず二点目からになりますが,

リーダーを語るからには、そのリーダーの個人的属性について語るべきなのであり、たとえば理念とか政策とかを持ち出すのはおかしい。理念や政策は、そのリーダーが属している政党や団体の属性である。だから、「リーダーを選ぶ基準として理念や政策を大事にする」というのは、(独裁者を好むのであれば別だが)ボクは理解できない。

というくだりが,私には理解できません.

理念や政策が,「そのリーダーが属している政党や団体の属性である」べきだから,リーダー候補の「理念とか政策とかを持ち出すのはおかしい」と言うなら解ります.だが,現実にはリーダー個人に属している範囲の理念や政策が政党や団体のそれらに大きな影響を及ぼすことが多いのですから(e. g. 小泉純一郎と郵政民営化), 「リーダーを選ぶ基準として理念や政策を大事にする」 のは当然ではないでしょうか.

また,学術的なリーダーシップ論としては,特定の理念や政策とのかかわり抜きにリーダーを評価しうる基準を提示すべきだという論なら理解できますし私もそう思いますが,ここで河野先生が述べているのはそういう趣旨ではないでしょう.その種の話に近いのは,引用した箇所の次(三点目)に出てくる「集められる限りの情報を集めさえすれば、その中から自ずと答えが出てくるような」ものではない決定を行える能力こそリーダーに求められる,という主張の方だと思われます.

これは支持不支持は別にして理解できる立場ですし,2008年頃から言われている「決められない政治」批判とも結び付けやすいものです.政治的な決断と責任を委ねうる主体としてのリーダー像,ということになるかと思います.私は「決められない政治」批判に与したくはありませんし,例えば野田首相が原発再稼働のような決断の責任を「とる」ことができないのは明らかですが,そういった責任を「帰する」ことができる制度的仮構としての主体(象徴?)が必要なのは理解できます.

最後に述べられている四点目の主張には,私は明確に反対です.リーダーは自らのプライベートな情報も開示すべきであるという点については,その必要はないと思います(自ら進んで開示する自由は尊重します).リーダー選出にあたっては私生活についての情報も評価の対象にするべきだという主張については,そういった側面を評価対象にしたい人が勝手にすればいいと考えます.有力政党のリーダー候補になるほどの有名人なら少量でも何らかの情報はこぼれてくるでしょうし,その種の情報は知りたい人が勝手に調べればいいのです(「二流週刊誌」が既にこの需要に応えているなら,わざわざその役割を「主流のメディア」に移すべき理由は乏しいように思われます).

リーダー候補の個人的属性が重要であるとしても,個人的属性のすべてが重要であるわけがなく(概して言えば,「食事の好み」が取り上げるに値する情報とは思えません),では個人的な属性のなかで何が重要なのかは明らかとは言えません.個人的属性を考慮すべきだから私生活についての情報を報道すべきだと言うのは飛躍ですし,あらゆる属性が多少なりとも考慮に値しうるとすれば,例えば外見的特徴の扱いが問題にならざるをえません(別に扱っていけないとは断言しませんが,疑問は覚えます).

以上,私の疑問をまとめると,「リーダーを選ぶ」ことが「個人的な属性を選ぶこと」であるとしても,何が考慮すべき属性であるのかが直ちに定まるわけではなく,また,リーダー個人の属性は彼が指揮する集団の属性に影響を与えうる(場合によっては,集団の属性から影響を及ぼされうる)のだから,個人にのみ属する性質をだけ考慮すべき理由は存在しない,ということになるでしょうか.個人的な資質も当然重要ですが,独裁者を好むのでないのであれば,理念や政策も同等かそれ以上に考慮すべきです.

借出@市ヶ谷図書館: 森脇 [2000]; 小野 [2001]; オルソン [1983]; ダール [1988]; Dahl and Lindblom [1992]; Dahl [1970]; Dahl [1989]

  • 森脇俊雅 [2000]: 『集団・組織』(社会科学の理論とモデル 6), 東京大学出版会.

  • 小野耕二 [2001]: 『比較政治』(社会科学の理論とモデル 11), 東京大学出版会.

  • オルソン, マンサー [1983]: 『集合行為論』 依田博/森脇俊雅 (訳) , ミネルヴァ書房.
    • 新装版が貸出中.

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  • ダール[1988]: 『経済デモクラシー序説』 内山秀夫 (訳) , 三嶺書房.

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  • Dahl, R. A. and Lindblom, C. E. [1992(1953)]: Politics, Economics and Welfare, new ed., Transaction Publishers.
    • ペーパーバック.

  • Dahl, R. A. [1970=1990]: After the Revolution?, revised ed., Yale University Press.
    • ペーパーバック.

  • Dahl, R. A. [1989]: Democracy and Its Critics, Yale University Press.
    • ハードカバー.

読書@市ヶ谷図書館: 長谷部 [2012]; 辻村 [2012]

  • 長谷部恭男 [2012. 10]: 「自己欺瞞と偽善の間――「狂気の皇帝」カリグラ」『世界』(835): 190-198.
  • 辻村みよ子 [2012. 10]: 「カウンター・デモクラシーと選挙の効果的共同へ――「市民主権」の両輪として」『世界』(835): 199-205.
    • 未成年を含む「社会的市民(citoyen-civil)」の「政治的市民(citoyen-politique)」との共同.