著者の山崎望先生より、次のご論文をご恵贈頂きました。誠にありがとうございます。
- 山崎望 [2018] 「二一世紀に自由民主主義体制は生き残れるか――正統性の移行と再配置される暴力」『国際政治』194: 14-28
従来の自由民主主義体制を支えてきた正統性の「移行の諸相とそれに伴う暴力の再配置」(15)について、国内政治/国際政治を貫く視座から論じる内容で、現代の政治的変化に関する極めて包括的な見取り図を与えてくれるものと受け止めました。
特に、自由民主主義と主権国家/国民国家システムそれぞれに関する「移行」――異なる「正統性の間でせめぎ合いが起きている」(14)状態としてのそれ――にとどまらず、そこから、新自由主義とコスモポリタニズム、ポピュリズムとレイシズム、例外状態における統治と「帝国」、といった異なる新たな言説の節合を指摘し、これらへの重層的な移行(の始まり)として自由民主主義体制の「危機」を描き出すところは特徴的で、興味深く拝読しました。
また、正統性の移行のみならず、暴力の(再)配置(制度化、埋め込み、封じ込めと、それらの無効化)についても整理をなさっているところが重要であると感じます。私自身が全く不勉強な点であるということもあり、多くを学ばせて頂きました。
昨年度と今年度は「政治体制論」という科目を担当していたこともあり、権威主義体制などに関する比較政治学の知見を勉強することが結構あったのですが、この論文に学ぶことができていれば非常に有難かったなと思う次第です。規範的政治理論におけるデモクラシー論、グローバル・デモクラシー論と、比較政治学・国際政治学の知見を結び付けていく重要性を再認識する機会ともなりましたので、隣接分野の研究動向に鈍感とならないよう心がけたいと思います。